製造でTPSといったらTOYOTA PRODUCTION SYSTEM とイコールのことだと認知されています。今でこそ、トヨタ自動車さんの広報資料等でもTPSと書かれています。しかしながら、ここにいたる歴史を考えてみるのも良いでしょう。大野耐一さんは、決してTPSなどという言葉を使っていないようです。丁寧に「トヨタ生産方式」と言い、「トヨタ生産方式の基本思想は『徹底したムダの排除』であり、しかも、それを貫く二本の柱がある。 (1)ジャスト・イン・タイム (2)自働化」という説明の仕方だ、 としています。   そもそも、生産雑誌の記事に於いて、「当N社では『生産システムはNPSと言う』」・・・・等と言っていたように思います。会社の名前分だけ略語が出てきていました。

最近でも同様です。かくいう私もA社で、APSの活動をしましょう、と言っていました。また、経営的な意味で 〜 Production Way として ○PW という言い方も出てきました。
 ここで、TPSの本質とは関係ありませんが、もともとTPSという言葉は、最初にトヨタさんで使われ始めたものでなくて、T’社がデミング賞受審時に会社名より、「T’社生産システム=TPS」 と付けよう、これなら略語は同じになるから、将来的にもお客様であるトヨタさんに迷惑をかけないだろうと考えて当時のリーダーが短縮形で初めてネーミングしたものと聞きます。これが、「TPS」=「トヨタ生産方式」と今では誰もが思っています。
 また、トヨタグループ内では、「トヨタ生産方式自主研究会」という、相互に工場を訪問して切磋琢磨して高いレベルの生産方式を目指すという会合があります。また、社内的にもいろいろなレベルのものがあるので、簡単に「自主研」と言ってしまいます。ある時、会社の入口玄関に於いた看板が「トヨタ自主研」と表示されていて指導主査より注意されたことがあります。これは、「生産方式」を研究する場だから省略するなという趣旨だったかと思います。
 私は、言葉にこだわりますが、本質が失われないかぎり、ネーミングがどうであろうと正しく伝えることができれば問題ありません。常識というのは、共通の認識・知識だと日本語のわかるイギリス人に言われたことがあります。共通の理解があって初めて議論ができるわけです。それですから、正しく概念を伝えないと間違って理解されることとなります。最初のインプットが違うと、後で、それは違いますと丁寧に説明する必要性がでてきます。海外では、日本語の言葉を丁寧に説明することもあります。その方が、概念を伝えやすいからです。日本のモノづくりの概念を英語にできないということでそのまま使うほうがよい場合もあります。
 Kaizen はそうですね。平準化生産、平準化を、一般には Leveled Production、 Leveled とした例がありますが、私達は、あえて HEIJYUNKA としました。自働化も JIDOKA ですし、Autonomation という言葉はあまり好きではありません。Autonomationにきちんと自働化の概念がついてくれば問題ないのですけれど。また、 トヨタ生産方式は、LEAN生産方式としてよく知られていますと言われても、それは、アメリカの方がトヨタさんの研究をして名づけたものですし、本質的には違う要素があるものだと思っています。
 日本が自信を失っていると言われだしてから久しいですが、技術開発を含め、日本がこれまで培ってきたものを大切にすることが必要です。スピード、変化に対応することが求められていますが、一方で自信を持つことも必要です。モノづくりのしくみは、世界が学びたいものです。私も、海外で教えることがありますが、なかなかキャッチアップしにくい本質的なものがあると思っています。この点を大切にしていくことが求められます。
 誤解のないようにして欲しいのですが、書籍では、「トヨタ式」とか、「トヨタ方式」 とか、時には一面的なものもあって、時代の変化を考慮しても大野耐一さんが決して言わないだろうというようなことがありますね。インドの象の寓話のように一面だけをとらえたことを「〜式」とするのはどうでしょうか。
 トヨタ生産方式は、哲学だとか宗教だとか言われることがあります。大野さんが、モノづくりの原理・原則に立脚していると私は思っているので言われることに抵抗はないですね。今でこそ、日本でもアンチTPSという人は少なくなりましたが、海外の人のほうが「トヨタ生産方式は合理的な考え方だ」と認めている気がしますね。また、TPSという略した言葉で「トヨタ生産方式」が理解されるのならうれしいですね。

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