1−1. セル生産について

セル生産については、これまでに公知となっている書籍、文献等を矛盾なく説明するために、書籍「セル生産」で基本的な考え方を議論し整理しました。

1−2. セル生産、セル生産方式という言葉・定義

 セル生産は、セル生産、セル生産システム、セル生産方式等と様々な名称で呼ばれています。また、この中で1人で完成品を仕上げるやり方を「一人屋台生産方式」、多人数はセル生産方式だと呼ぶ例もあります。従って「セル」と言う時に、どれかをイメージして話さないと齟齬が生じます。かなり前より家電業界でセル生産という言葉がはやりだしたのですが、こういう生産方式をはじめたという内容を聞いた時、自動車部品業界では、既に1人で完成品まで製造することやるやり方があるのになと思ったのは当時の正直な気持ちです。だから、トヨタ生産方式がセル生産そのものだという立場からの書籍もあるわけです。また、細かい議論ではセル生産はトヨタ生産方式と違うという議論もあります。
 とは言え、この「セル生産」という言葉の乱れは、権威である工学会での定義があるにも関わらず定まったものがないのが現状です。このことは、経験豊富な山崎功郎先生が著書の中で、「混乱している『セル生産方式』という呼称」として指摘しています。ですから、一般的にインターネットで、「セル生産〜とは、・・・・」とあるのは、どこから定義を持ってくるかで種々雑多に分かれているようです。
 なぜこの言葉・定義にこだわるかというと、セルというときにどこを対象にしているのかを明確にせずに議論しがちであることが多いからです。例えば、「御社のセルラインを見学させて下さいと言われたけど、うちの自動車部品組立てラインはセルじゃないのにね」という問いかけに「いや、うちのも彼らの言うセルですよ」と答えるやり取りを経験しました。
 学者諸兄が示すセル生産の議論は厳密なものですが、セル生産に関する議論の現状を踏まえ、分かりやすく層別した定義を提案し、より実際的な利便性を追及することが重要です。詳細に興味のある方は、著書を見ていただくとして、セル生産の定義は次のようです。
 セル生産の定義
 セル生産とは、
 1人または複数の作業者が複数工程を担当し、
 脱コンベアの簡易設備で生産するもので、
 ライン性能が、作業者の能力により自律的に決まる性格を持つ一連の生産方法をいう。
 ここで、狭義では個別のセル生産ライン、広義ではセル生産システムを意味し、また特に、引取り生産、押出し生産を問うものでない。

1−3. セル生産ラインの基本要素

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 セル生産ラインは、作業者を主体として生産ラインが構成されます。ヒトが作業しやすいようにラインが作られていることが大切です。日本能率協会マネジメントセンター「セル生産」では、「つくるセル生産ラインのイメージ」として、ヒト・設備・しくみの3要素のトライアングルとしてこのように描いています。

ここで道具などの設備をどのように構成するかは、生産技術、製造現場として大切です。さらに、品質・生産性を求めるうえで考えなくてはいけないことは、標準作業です。作業者の「楽な作業」を追求した標準作業がなされると、結果として良い品質の製品を製造しやすくなるのです。

1−4. セル生産システムの構築

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 「セル生産」という時、 トヨタ生産方式をベースとして説明する例が多くあり、初学者には非常に分かりにくいものになっており混乱しています。 この図のように生産ラインを形態的に、個別のラインであるか、システムであるかを考えましょう。

 また、生産情報は、どのようであるかを考えましょう。計画生産なのか、受注生産なのかで生産職場への指示が変わります。 需要予測に基づく押出し(計画)生産であろうと、トヨタ生産方式が理想とする後工程引取り生産であろうと、システムとしての”セル生産システム”であるという考え方が大切です。 しかしながら、お客様の視点に立った時には、必要なものを必要なときに生産すればいいのですから、生産職場の実力があれば、後工程引取り生産(プル)に利があると考えられます。 

1−5. セル生産職場の活動

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 セル生産を生きたものとするためには、全社活動で活動します。 品質(Q)、原価(C)、納期(D)などを生産性の指標として生産職場の管理活動を行います。ここでは、生産職場を中心にして、管理者、監督者、工場や間接のスタッフがサポートするしくみが大切です。生産職場のチームワークのもとに、継続的な改善活動が望まれます。

1−6. セル生産職場事例

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 セル生産職場は、ここで示したセル生産マップで類型化されます。 多品種少量品の生産、あるいは変種変量品の生産のためにセル生産を実施している事例が多くあり、様々な改善活動を通じて独自の結果が得られています。いずれにせよ、ヒトに着目した視点がより良い生産職場に寄与することでしょう。

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 (目次)
第1章 セル生産を取り巻く環境 
第2章 セル生産の基本的考え方

第3章 セル生産ラインの構築
第4章 セル生産システムの構築

第5章 セル生産の運営・維持・向上 
第6章 セル生産の応用事例

書籍中国版「セル生産」

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豊田細胞式生産 武内登著 北京: 東方出版社
ISBN 978-7-5060-7537-4

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